介護現場では、対介護職同士、対利用者などを含めコミュニケーション能力が重要といわれます。しかしながら、何をもって優秀なコミュニケーション能力の持ち主というのかは、根拠づけが難しいというのも介護現場の課題です。たとえば、話がうまく、誰とでも打ち解けられるというだけでは、介護職に必要とされているコミュニケーション能力を持ち合わせているとはなりません。大切なのは、そのコミュニケーションスキルを通じて、課題解決に向けた一定の効果が得られているかどうかです。
思い付きのコミュニケーションを蔓延させてしまうと、利用者と談笑するという瞬間的な事実だけが目的になる可能性があります。そうなった場合、利用者の機嫌がたまたま悪く、笑顔のリターンが少なかったりすると、介護職側のモチベーションが下がってしまうことがよくあります。何がコミュニケーションのよりどころかを考えたとき、いい雰囲気という漠然としたものになっていると、立ち直りのための修正がききにくくなるので注意が必要です。ここで根拠のあるコミュニケーションができていれば、利用者にとって意欲の方向性が変わっているのではないか、機嫌が悪いのは、体調などに異変があるのではないか、あるいは、介護職側に修正しなければいけない課題が生じているのではないかという具合に客観的な視点を生み出すことができます。これにより、コミュニケーションを通じて、アセスメントやモニタリングの精度を高めていく、効果をあげるためのPDCAサイクルが働きだすことになります。